ペンクリニック

あまり書き味の良くなかったサファリ万年筆を、ようやくペンクリニックで見て頂くことができた。
以前教えて頂いたセーラーのペンクリニック、ペンドクターは川口明弘氏。
売り場に設置された特設テーブルに行くと、先客がなく、すぐに見てもらうことができた。
テーブルの上には、何本もの調整済みと思われる万年筆が並んでいたが、どれもこれも高価なものばかり。サファリのような廉価万年筆を差し出すのが、ちっとおこがましく感じられる。
テーブルについてペンを差し出すやいなや、女性店員から一枚の紙を渡され、そこに住所や名前などを書くように言われる。カリカリと書いていると、ペンドクターは「何でこのクリニックをお知りになりましたか」と質問した。インターネットでセーラーのホームページを見て、と答える。
ドクターは職人らしい手つきで、ペン先を外しゴシゴシとやって、一瞬で調整を終えた。
紙に試し書きをしてみてと言われ、書いてみると、インクがさらさらと出てくる。Fニブではなくて、Mニブくらいの太い線になった。全く別のペンになったような印象だった。
ドクターは、発砲スチロールで出来た巨大なペン先模型を使って、ペンが紙に当たる角度についてのレクチャーをしてくれた。
「この状態でペン先(切り割りの中心)が紙にあたってるときは、ちゃんとインクが出るけれど、こんな風に斜めに(ペン先の側面部分が)あたってしまうと、書けないんですよ。」
なるほど、ペン先の紙へのあて方がとても大事なんですね。

鉛筆やシャープペンで書くときは、芯の先端が丸まってくると、尖った芯先が下に来るように軸をまわしながら書いたりするけれど、万年筆はそれができない。とても制約の多い筆記具だが、そうした制約に慣れた先に、万年筆の快楽があるのかも知れない。