『1分間勉強法』石井貴士(中経出版)を読む

この本、書店のビジネスコーナーに平積みにされているのである。「6万人中1位をとった勉強法」という帯が付されていて、てっきり6万人の読者アンケートで1位の評価を得た本なのか?と思ったら、著者が浪人して受けた代ゼミか何かの模試で全国1位をとったという過去の栄光のことなのであった。つまり、この本はお受験本なのか?と思いながら、ちょっと立ち読み。買う気はしなかったが、ちょっと読んでみてもいいかな?と思ったことも事実。
どうして買う気がしなかったのかと言えば、かなり怪しい内容だったからである。つまり、「1分で本一冊を読む」ということが解せなかった。それって「読んでいる」と言えるのか? 著者は、自分が説いているのは所謂「Reading」ではなく、「Leading」なのだ、ページを見て感じろ!、直感が自分にとって大切なことが書いてあるかどうかを教えてくれる、そう直感できたらページの端を折れ!、とか言って。最近の速読術やフォトリーディングとか、かなり胡散臭いと思ってきたクチなので、「おいおい、いい加減にしてくれ」とマジで思った。
では、「ちょっと読んでみてもいいかな?」と思ったのは何故か?それはちょっと説明が要る。つまり、この著者、短期記憶はアテにならないから、とにかく1分で何度も繰り返すことが暗記への近道だ、と主張しているのである。思い当たることが多かったので、読んでみたいかな?と思ったのである。でも、それって特別珍しい話でもないのだ。例えば、中卒の学歴から弁護士にまで成り上がった大平光代の『大平流「独学」のすすめ 応援します、あなたの旅立ち』(講談社)には、すでに同じことが書かれていたのだし、隙間時間を有効活用した勉強法については美崎栄一郎をはじめ最近のビジネス書でも多く語られてきたテーマ。朝活だの何だのと勉強ブームな昨今、たいして耳新しい話題ではないのである。
肝心の読書法や勉強法に到っては、「分からないことは1分間勉強法をもってしても分からない。新しいことを学ぶには時間がかかるが、うる覚えだった既知の事柄について勉強した方が、速いし効果的」みたいな話になっていて、外山滋比古の「α読み」を持ち出すまでもなく、既知を読むことを読書と考えていらっしゃるようなのだ。
直感でヒットした「既知の事柄」を、わざわざ4色に色分けしてノート整理みたようなことをして、それを「1分間読書せよ」と、これまた1分に拘った力説をされている。
既知ではあるが曖昧な事柄をつきつめることの効用は認めよう。でも、これが果たして「勉強法」を名乗れるほどのものなのか? アマゾンでは詐欺商法みたいな本だと酷評しているコメントがあったが、言いえて妙である。
実際この本の第一章は、「読者の声」に宛てられ、章の区切りごとに「体験者の声」がコラム的に配されたりして、怪しげな商品の広告戦略そのままやんけ!といった按配になっているのだ。
一読する価値はある。でも買わずに立ち読みで済ますべし。1時間あれば読破可能な内容だ。(ちなみに、俺はブックオフの百円コーナーで見つけて買ってしまったが・・・。あれって麻薬的な誘惑なんだよな)