『女性の品格』坂東眞理子

品格ブームというのが数年前、確かにあった。
国家の品格』が世に持てはやされていたと記憶するが、そんな中で本書『女性の品格』が話題となり、あれよあれよといううちにベストセラーに登り詰めたという印象がある。初版は2006年10月。今から4年前ということになる。
4年前といえば、ハンカチ王子に沸き立ち、東国原知事当選、ハニカミ王子といった話題が盛り上がっていた頃。時代は新しいスターやリーダーを求めていた。そこに颯爽と現れた二人の好青年。そしてオヤジ。ところがこのオヤジもなかなか話題性に事欠かず、ある種のリーダーっぷりを発揮していた。
あれから4年。今読んでみると、この書もまたあるべきリーダーの形を説いた本ではなかったかという気がする。副題には「装いから生き方まで」とある。女として、より高いレベルの生き方を身の回りの小さなことから説き始める。
でも読んでいるうちに、「これって儒教の教えじゃない?」って気がしてくる。「相手に礼を尽くす」ことや「プライバシーを詮索しない」だとか、本書で指摘されている内容はどれ一つとっても「仰る通りです」というしかない。そして何もこれはオンナばかりではなくオトコにも通用する話なのである。いっそのこと『人間の品格』とでもすればよかったのに。
と考えてきて、やはりこの本は『人間の~』ではヒットしなかったのではないか?という疑念が浮かんでくる。「負け犬の遠吠え」(酒井順子、2003)とか言われて、あるいは「派遣社員」という現実(そういえば『ハケンの品格』は2007年1月~放送だった)に自信を失いかけていた女性たちが、一時の矜持として「品格」を必要としたのではないか。その後の「アラフォー」(2008)や「婚活ブーム」を見ていると、「品格」なんてまだまだ前哨戦だったなって気もしなくもない。
じゃあ、オトコたちはどうなんだよーって声が聞こえてきそうだが、オコトたちは今や「草食系」になり下がってしまった・・・・・・と思ったら大間違いである。
ハンカチ王子はいよいよプロになって登場する。嵐の戦場に出て行くのは、男たちの番なのである。