「遅刻多い生徒『地獄へ直行』…中学廊下に名前掲示欄」について

本日のYahooニュースから。上記タイトルの記事についてコメントします。
記事の内容は次のようなものです。

 川崎市麻生区の市立長沢中学校(渡辺直樹校長、492人)で、2年生(4学級)の学年主任を務める男性教諭(48)が昨年9月~12月、「イエローカード」から「地獄へ直行」まで5段階の文言を書いた模造紙を廊下に張り、遅刻回数に応じて生徒の名前を張り付けていたことが28日、分かった。同校によると、模造紙には、ほかに「レッドカード」「家庭にTEL」「校長先生と面談」と書かれ、生徒の名前は付せんで張られていた。渡辺校長は10月ごろ、掲示に気づいたが、「教諭と生徒の関係がうまくいっていた」として放置。しかし、11月上旬、文部科学省職員が視察に訪れた際には外させた。視察後、この教諭は再び模造紙を張り出し、12月末になって、他の教職員から疑問の声が強まったこともあって外された。撤去時には7、8人の名前が張られていたが、この間、「地獄へ直行」に張られた生徒はいなかったという。(YOMIURI ONLINE)

まず、この話題のどこにニュース性があるのか、ということです。
この学年主任の男性教諭がしたのは、遅刻の多い生徒の氏名を「五段階の文言を書いた模造紙を廊下に張り、遅刻回数に応じて生徒の名前を貼り付けていた」ということです。問題とされているのは、その模造紙に書かれた文言なのではないかと推察します。「イエローカード」から「地獄へ直行」というのですが、これらの文言の代わりに、遅刻回数が「10回の生徒」「11~20回の生徒」「21回~30回の生徒」といった記述であったなら話題にすら取り上げられなかったのではないか、という気がします。しかし、この教師は「地獄へ直行」と書いた。じゃあ、その地獄って何なんだよ、ということになるのですが、この記事からは、それが何なのかは分かりかねます。ただ「地獄」という言葉は、何か不吉な想像を喚起して止まないメッセージ性のある言葉であるということです。実体がどうであるかよりも、そのメッセージ性にこそこの話題が事件化する原因があったのではないでしょうか。
僕は、この教師が学年主任としてどれほど有能だったかは知りません。子どもたちからどれほどあつい信頼を得ていたのかも知りません。恐らく、このニュースに触れた多くの人が、同じ立場にあると思います。だれもが、この教師と子どもとの関係性について言及することができません。
では、この教師はダメ教師なのでしょうか。
与えられた情報からは、それを断言できる根拠が見つからないのではないか、と僕は考えます。
この教師が仮にこういった「悪い冗談」を子どもたちに対して平気で言い、子供たちもまた狡猾にこうした冗談をかわしつつ、両者ともにいい意味での緊張関係を持っていたなら、この話題のどこに問題があるのかと逆に生徒たちから声が挙がるはずです。悪い冗談を言う気の置けない教師に対して、厚い信頼が寄せられていたっていいはずです。事実、この学校の校長は、これを認める立場だったのです。
じゃあ、誰が認めなかったのですか。
視察をした文部科学省職員であることは明らかです。このことを問題にした最初は、文部科学省の役人です。じゃあ、なぜ、彼らは問題にしたのでしょうか。もちろん、彼らは子どもと教師の関係性を分析してそう判断したというより、言葉自体にこだわったのでしょう。そこに、このニュースの核心があるような気がしてなりません。
しかし一般読者としては、こうした記事の表層に踊らされて「バカな教師がここにもいたか」と安易に納得するのではなく、こうした記事が語らないものにこそ積極的な懐疑を持つべきなのではないでしょうか。こういう考えは、教師の肩を持ちすぎでしょうか。