山本美香さんの死

紛争地域を取材するフリージャーナリストの山本美香さんが殺害されたニュースに衝撃を受けた。
You Tubeでは、殺害される直前まで山本さんが撮っていた映像(同行取材していた佐藤記者の映像も混じっている)アップされている。
死体の山本さんの映像はショッキングだけれど、その遺体に向かって「痛くなかったか」と号泣する佐藤さんの姿もまた痛々しく、痛切な感じで、見続けることができない映像だった。
山本さんの死の直前まで撮っていた映像は、そこが紛争危険地域とは思えないような、場違いなくらい穏やかな空気に包まれている。紛争地域とは、非日常的な異空間なのではなく、われわれの日常と繋がった、親しい場所なのではないか?という思いを強くする。
 
かつて紛争地域に出かけて行って、人質として拉致され、殺害された若者がニュースになったとき、日本中に「自己責任」論が吹き荒れたことを僕は忘れることができない。
今回のような事件も、やはり「自己責任」と言うのだろうか。もし言わないとするなら、先の若者と山本さんの違いとは何なのだろう。
 
紛争地域を知ることの大切さは、山本さんが、まさにその命を懸けて、僕たちに教えてくれていることで、その意味では、かつての無謀な若者も同じように紛争地域というものを身をもって我々国民に教えてくれていた。その行動の無謀さの是非はともかく。
行動の無謀さという意味では、「紛争ジャーナリスト」という存在について、この国の報道規制がどうなているのかを含めて、再度検討されることになるだろう。
多くの矛盾を抱え込みながら、きれいごとで終わらせるメディアの体質に異議を申し立てるだけでなく、報道ジャーナリズムのあり方、紛争地域とのかかわり方、現在進行形で起こっている紛争、といったものをどう考えていくのか。
窓の外では町内会の祭りが虚しく響いていた。