『わたし、男子校出身です』を読んだ

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2008年に出版された本。先日○ックオフという古本屋で購入。
世の中は男と女の二つの性別がある。やがて大学の授業では、生物学的な性とは異なる社会的な性としての「ジェンダー」という言葉を教わる。そして、セクシャリティーの問題として、異性愛ヘテロセクシャル)と同性愛(ホモセクシャル)があるのだと教わる。
でも、世の中のセクシャリティというものは、もっと複雑で微妙な問題を含むものらしい。たとえば、本書の著者である椿姫彩菜さんは、生物学的には男であるが、性自認は女であり、女として「異性愛者」なのである。この書は「生物学的な性」と「性自認」の間に齟齬を持って生まれてきた一人の人間の自分史である。
性同一性障害」という言葉で語られることが多いけれど、実際にそのような引き裂かれた状況を生きることは他人の想像をはるかに超えるものだということが、読んでみるとよく分かる。家族との確執、周囲の誤解や嘲笑、偏見。言うのは簡単だが、実際にその状況を生きることがいかに困難なことか、椿姫さんはとても説得力のある文章で述べている。
この本の素晴らしい点は二つあるように思う。
一つは「性同一性障害」を持つ人間の生き難さや困難を率直に語っている点だ。
もう一つは、世の中の恨みつらみではなく、周囲で自分を支えてくれた存在への感謝に満ちている点。たとえば、最初は奇異の目で自分を見ていたが、やがて最良の理解者になってくれた男子校の同級生たち。また、歌舞伎町のニューハーフのお姉たち。さらに自分を苦しめた家族、特に母親との確執を乗り越えていこうとする意思の強さに、圧倒されてしまう。そこには、自分の存在する意味や可能性を信じようとする、心の強さみたいなものが感じられるのだ。多分僕たちは、そんな言葉の数々に感動してしまうのだと思う。
久々に泣きそうになる本を読んだ気がする。