自分を捨てる

すっかり自信を失った。
これまでのキャリアなんて、どこかに吹っ飛んでしまったようだ。
自分に自信がないというのは、なんて悲惨なのだろう。
でも、どこかで、そんな惨めな自分を眺めながら、とことん落ちぶれたら面白いのに、と思う自分がいることも確か。
これまでの経験や、その中で積み上げてきたものを、いったん白紙に戻して、まっさらな状態になって、一から築き上げるということが今求められている。そこで、なお、澱のように残るものがあるとすれば、それこそ自分の中の本物なのだと言えそうである。
僕は、自分の薄っぺらな思惑や計算の巧みさだけで、この新しい環境での新しい課題に立ち向かえるなどと思っていない。やっつけられるだけやっつけられるのがいい。それで失われる自信なら、そもそもその程度だったのだから、そんな自信など打ち壊されてしまえばいい。
なにもかも無に帰して、しゃにむにになって頑張って、今の環境の中で生き残ろうともがき苦しみ、その中で自分に自信を持てるような何かをつかめれば幸いである。そういうやり方でしか、自信を築くことなんかできないだろうとも思う。
まるでビルの屋上から飛び降りるかのように、どこかで自分をかなぐり捨てなければならない修羅場があるのである。そこで自分を捨てる勇気があるかどうかが試される。自分を捨てられたものだけが、はじめて手に出来る「自分」というものがあるのである。僕は、そう信じている。