ある精神疾患に関する推論

鬱などの精神疾患について思っていることがある。
ぼくは専門的なことを学んだことはないので、勝手な推論にすぎないけれど。
たとえば、『それから』の主人公「代助」が、風呂から出たときに自分の足を見て自分の足だと思えなかったり、当たり前だった漢字が突然、見慣れない違和感のあるものに見えたり、といった知覚の異変は、誰もがきっと一度は経験することではないだろうか。
これまで当たり前だった簡単な漢字なのに、突如、意味不明のインクの染みに見えてくるという経験。
先日何かで、こういった問題を脳科学の分野から説明している文章を読んだ。朝日のbeだったかな?
錯視のことに触れていた記事だったような気がする。

いずれにせよ、これまで自明であったこと(無意識レベルの自動化した知覚認識)が、突如自明でなくなるという経験は誰にでもあるだろう。そしてその背後には、知覚の障害のようなものがあるのかも知れない。知覚に捻じれが生まれたり、認識の脳内ネットワークに亀裂や断絶が生まれるといったことである。それは器質的な疾患なのかもしれないが、そういった原因によって、突如、意味を失った世界に放り出されてしまう。
これまで当たり前に読めて書けた見慣れた漢字が、突然見慣れない線の集合に見えてくるといったことが、日常の全ての事柄について起こったら、きっと道を歩くことも出来なくなり、ただただ恐ろしく感じるのではないか。これまで当然で当たり前に過ごしてきた日常に、突如として亀裂が生じ、不自然で違和感を感じる世界へと変わってしまうという経験。そういうことを想像してしまう。