「言の葉の庭」(2013年)を見た

イメージ 1

新海誠監督の「言の葉の庭」(2013)をみた。
僕は「君の名は」をまだ見ていないので、新海作品はこれが初めて。
映像の美しさに驚いた。
特に水の表現がひときわ素晴らしいと思った。透明感があり、揺れ動いている。
どうやってアニメでここまで表現しているのだろうか。
ここまで精緻な映像表現を描いていくとなると、それなりの複雑な工程が必要となり、多くの若いアニメーターが死ぬほど制作作業に追われるのだろうか。
先日見たオイコノミアで、セル画1枚につき200円と言っていたっけ。

ストーリーだが、この世界に馴染めない二人が、少しずつ歩み寄っていき、最後に別れるまでを描いている。
教師と生徒という、ちょっとアブない設定なのだが。
僕としては、こういう二人が惹かれ合っていくというのは、非現実的な印象だったけれど、映画の世界観の中では成立している感想を持った。
共通するのは、二人とも自己確認できる他者を持たず、それゆえに社会から浮遊した地点に、まるで閉じ込められてしまっているかのようであること。

ラストシーンで、少年が自分から離れていこうとしている女性に対して、込み上げてくる感情を怒りとしてぶつけ、その感情に連鎖反応するかのように自分の正直な気持ちをぶちまけて泣く場面がある。
少年の気持ちの爆発が唐突で、「えっ?」と思った。
一方で、自分の気持ちを正直に吐き出しながら、少年の胸に飛び込んでいった女性の涙に、もらい泣きしそうになった。
それは、どこにも自分の心の置き場所がない現代の中で、自分を確かめられる他者の存在を、ようやく確かめ得た感動なのだろうか。
社会(世界)と自分の存在との間に確かなものが見えない現代の都市空間における、浮遊した個人の物語として見ると、とても現代文学的な作品だというのが感想だ。